AdobeによるMarketo買収はMarketoユーザー企業にとってどんなメリットがあるのか?

Salesforceの年次イベント、Dreamforceの開催の直前にAdobeの大型買収ニュースが飛び込んできました。AdobeがマーケティングオートメーションのMarketoを47億5,000万ドルで買収する、というものです。

アドビ、マルケトの買収を発表

https://www.adobe.com/jp/news-room/news/201809/20180921-adobe-acquire-marketo.html

アドビ、マルケトを買収。顧客体験と顧客エンゲージメントを中心にデジタルトランスフォーメーションを推進

https://jp.marketo.com/blog/adobe-to-acquire-marketo-to-place-customer-experience-and-engagement-at-the-heart-of-digital-transformation.html

これは、デジタルマーケティングに関わる多くの人にとって、大きなインパクトとなりそうです。もちろん、全世界5,000社以上のMarketoユーザーが一番大きな影響を受けるはずです。(弊社もMarketoユーザーであります)

独立経営を保ってきたMarketoの大きな方針転換

マーケティングオートメーション領域のリーダー企業であるMarketoは、どの大手ITベンダーのスイーツにも属さない独立系の企業として認知されてきました。

競合であるEloquaは、2012年にオラクルに買収されていますし、Pardotは2013年からSalesforceの製品となっています(PardotはExact Targetに買収され、Exact TargetがSalesforceに買収されました)。以来、どこがMarketoを買収するのか、MicrosotなのかSAPなのか?といった憶測が多くの人の話題となってきました。

しかし2016年にMarketoは、プライベートエクイティファンドVista Equity Partnersに買収され、上場を廃止、しばらくの間独立した道を歩む決断をします。

Marketo、Vista Equity Partnersによる17億9,000万ドルでの買収で正式契約を締結   Vista Equity PartnersがMarketoの発行済普通株式の100%を1株当たり35.25ドルで取得へ

以来Marketoは、独立かつマーケティングオートメーション専業ベンダーとして、他の様々なマーケティングツールとのオープンな連携を模索する「エコシステム戦略」を明確にしてきました。

このような背景に鑑みると、今回のアドビとの統合は大きな方針転換に感じます。

エコシステムからエンタープライズ強化なのか?

Marketoは、エコシステム戦略の推進とともに、エンタープライズ企業への積極的な販売も見据えてきました。2年前にCEOになったスティーブ・ルーカス氏を始め、経営陣はSAPなどのエンタープライズ企業出身者が目立つことはその表れだと思います。

エンタープライズ分野ではEloquaが大きな市場シェアを持ってきましたが、積極的にEloquaと競合していく戦略、と言えるかもしれません。対するSalesforceのPardotは中小・中堅向けのソリューションですので、Pardotと戦わずにEloquaと戦う戦略です。

そういう意味では、Adobeは特にCMSの分野でエンタープライズに強い企業ですので、今回の統合によってエンタープライズ攻略を一気に進める思惑があるのかもしれません。

Salesforce、オラクル、SAPと対抗するAdobe

一方のAdobeは近年、Omniture(現Adobe Analytics)の買収を皮切りに、デジタルマーケティング分野での買収による拡大に最も積極的な企業です。Day社のCQ5(現Adobe Experience Manager)やマーケティングオートメーションのNeolane(現Adobe Campaign)など、Adobe Marketing Cloud・Adobe Experience Cloudの主要な製品はAdobeの買収の歴史を表しています。直近では、EコマースのMagentoを17億ドルで買収しています。

今回のMarketoの買収金額は47億ドルと、過去のアドビによる買収金額の中ではマクロメディアを凌ぐ最大級のものとなっています。(2年前に17億ドルだったことも含め)Adobeのマルケトに対する期待値が表れていると思います。

MarketoによってBtoB企業向け機能の拡充が進むAdobe

Adobeは、Adobe Campaignによって主にBtoC企業が利用するマーケティングオートメーション(というより、クロスチャンネルキャンペーン管理)ツールを持っていますが、BtoBやリードナーチャリングを主体としたマーケティングオートメーションの領域はカバーできていません

対するSaleforceは、PardotがBtoB、Salesforce Marketing Cloud(旧Exact Target)がBtoC分野という棲み分けポートフォリオを持っています。またオラクルも、EloquaがBtoB、ResponsysがBtoCという組み合わせです。これらに対抗するためにもMarketoの買収は、Salesforceやオラクルへの対抗策として強力です。

今回の買収によって、ユーザー企業が受けるであろう影響を良い面・懸念点に分けて考えてみます。

Marketo + Adobe で考えられる良い面:主に連携機能

Adobeユーザー企業にとって:

  • BtoB企業においてCRM以外ほぼAdobe基盤で完結
  • Web訪問やメール反応などの行動データを活用したキャンペーン・分析の実現

Marketoユーザー企業にとって:

  • Adobe Target連携によるパーソナライゼーション機能の実現の可能性
  • Adobe Media Manager連携による広告を使ったナーチャリングの推進
  • Adobe Experience Manager連携によるランディングページ機能の充実
  • Adobe Analytics連携による詳細なWeb行動情報の活用
  • 強力なAI機能実装が進む

良い影響はわかりやすいと思います。Adobeユーザーにとっては、BtoB領域やリードナーチャリング領域も含めた統合基盤化が進むでしょうし、MarketoユーザーにとってもAdobe Targetや Media Managerとの連携は強力な機能拡充になるはずです。

Marketoユーザー企業にとっての3つの懸念点

Adobeユーザー企業にとってはあまり悪い面が見当たらないと思います。挙げるとすれば、EloquaやPardotを利用している企業が乗り換えを検討する必要もでてくる、といったところでしょうか。

一方Marketoユーザー企業にとってはどうでしょうか。以下のようなポイントは気になるところです。

  • Adobe製品として価格の値上げ
  • Adobeと競合するベンダーとの連携機能の廃止(特にSalesforce連携機能の拡充停滞、衰退)
  • 他のAdobeツールとの連携が主な投資対象となり、Marketoのマーケティングオートメーション機能自体の発展の停滞

価格値上げやSalesforce連携の問題は、MarketoからPardotへの乗り換えを検討する企業を増やすかもしれません。

個人的には3つ目の機能発展の停滞が気になります。

一般的には、専業ベンダーが大手ITベンダーの一角として買収されると、それまで計画していた機能拡充のロードマップが大幅に遅れ、関連製品との連携強化にばかりリソースが集中しがちだからです。この場合、Adobe製品で揃えることができる投資余力の大きい企業にとってはメリットがでますが、多くの中堅企業・スタートアップにとってはもどかしいかもしれません。

もちろん、Adobeはデジタルマーケティング分野において最も先進的・イノベーティブな企業です。こうした懸念が杞憂である可能性は高いと思いますので、今後のMarketo及びAdobeの発展を興味深く見届けて見たいと思います。

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