【上海キャッシュレス最前線】キャッシュレス化の進行は、デジタルマーケティングにどのような変化を促すか?

FinTechの浸透によって金融業界に限らず、デジタルマーケティングにも変化が起きています。その最も大きな変化の一つには、「キャッシュレス化の進行」が挙げられるでしょう。 日本は現金決済が中心でしたが、近年徐々にクレジットカードや電子マネーを使用できる場所が増え、使用割合も増えてきていることは実感されていると思います。

しかし、それでも日本のキャッシュレス比率は最新のデータ(※注)だと約20%です。中国の80%、アメリカの46%と比べると日本のキャッシュレス化は遅れていると言わざるを得ません。

筆者は上海出身ですので、まずは現在の中国・上海のキャッシュレス事情について紹介します。そしてキャッシュレスにより、デジタルマーケティングはどのように変化していくのを分析したいと思います。

※注: 平成30年4月 経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」より 、中国に関しては Better Than Cash Alliance のレポートより

中国ではキャッシュレス経済が浸透

中国ではスマートフォンのQRコードで決済するキャッシュレス経済が浸透し、むしろ現金での支払いを拒否するお店が増えてきています。あるいは現金で払えたとしてもお釣りをもらえないということがよくあります。中国でのキャッシュレス経済の浸透が目に見える例は、かつて街中にあったATMの激減でしょう。

キャッシュレス経済は単にお店で現金なしで支払うという意味だけでなく、小売、ケータリング、商業施設のみならず公共サービスなど、人々の生活に様々な影響を与えることになります。

なお、中国発の「WeChat Pay」は香港、タイ、また日本でも大規模な広告を出しています。みなさんも目にしたことがあるのではないでしょうか。

上海のキャッシュレス事情

現在上海においてほとんどの場所でQRコードの支払いが可能です。 街の屋台からシェアバイクまでスマートフォンで気軽に支払いができ、警察の罰金すらもスマートフォンで支払いができると言うと、大抵の日本の方には驚かれます。

上海では、スマートフォンを持っていれば、財布が必要ありません。上海ではもはや現金を使う人が珍しがられる状況です。

また、上海では、レストランやスーパーなどがオムニチャネルとしてもかなり活用されています。 QRコードを読み込むとWeChatでのフォローを求められ、フォローするとクーポン券やイベント、プロモーション情報が配信されてきます。企業はQRコードをフックにオンラインに誘導し、SNSを最大限活用しています。

ここで上海の3つの事例を紹介しましょう。

  • 事例1:レストラン「リモートオーダー」「セルフオーダー」

「リモートオーダー」

KFC、McDonaldなどでは、アプリを使って事前に食べ物を注文しておくことで、お店で並ぶことなく、注文の品をすぐに受け取ることができます。

「セルフオーダー」

レストランのテーブルにはQRコードが配置され、客はスキャンして料理を注文し、食べ終わったらそのままオンラインで支払いできます。

これまで客はピーク時間帯での人手不足による注文・配膳の遅れ、狭いスペースでの支払い待ちなどを強いられることが多くありました。しかしこの注文や支払いの方式が変わった今では、客は素早く、良い食事体験を得ています。 「リモートオーダー」や「セルフオーダー」により、セルフサービスで効率的な注文と支払いが実現出来ています。

  • 事例2:公共サービス

・WeChatの光熱費機能を使用することにより、電気代や水道費など全ての生活費用をキャッシュレスで支払うことができます。

・タクシーやバス、シェアバイクなどの移動手段は、全てQRコードをスキャンすることで支払うことができます。

これまでは店頭で長い行列に並び、現金で支払いをしていましたが、公共サービスのキャッシュレス化によって人々の生活の質が向上しています。特に、公共サービスのキャッシュレス化は日本では考えにくいのではないでしょうか。

  • 事例3:買い物

スーパーやコンビニ、ショッピングモールでもQRコードをスキャンし、プロモーションやクーポン情報を得て、セルフチェックアウトで支払いができます。もう長い行列に並び、待つ必要は一切ありません。 人々はWeChat会員のサービスを通じて最新のマーケティングプロモーションにより、必要な情報をすばやく入手し、それらを利用しています。

デジタルオーバーラッピングとは

「キャッシュレス化」により日常の買い物から、光熱費、レジャー、外食、移動など全ての消費体験がデータ化され、それは個人のIDにひも付いた状態になっています。例えて言えば、デジタル化されたデータが人々の生活を覆っていると表現できるかもしれません。

今ではサービスが「すばやく」「滑らか」に、「個人」「私だけ」に合わせてくれ、結果として生活のストレスがなくなり、生活の質が向上しています。 中国でのUXを研究するビービットは、こうした現象を「デジタルオーバーラッピング」と呼んでいます。

もちろんデメリットもあります、顕著な例は個人情報の管理ですね。

キャッシュレスを見越した今後のデジタルマーケティング戦略とは

キャッシュレス化が進み、デジタルオーバーラッピングされることで、消費者が求めるものは突き詰めると「自分(消費者自身)がほしいもの」になります。 つまるところ、企業が一番重要視すべきは「消費者を理解する」ことになるでしょう。

あらゆるサービスや製品がアップグレードされた現代では、低価格/高価格、低機能/高機能という比較表現は、もはや企業や社会が決めるものではなく、「その人個人が、受け止める価値として決める」状況になっています。 「消費者が価値として求めるもの」に、「企業が価値を提供」出来なければ、そのサービスや製品は選択されません。

最新の技術では、企業が「消費者を理解する」ことは簡単になりつつあります。

キャッシュレス化で処理される膨大なビッグデータは、AIや機械が自動的に分析します。企業・人(あるいはAIかもしれません)は分析結果を元にマーケティングに関する施策や意思決定を行うことができます。 これらのデータを複数のチャネルに展開していくコミュニケーションは、デジタルマーケティング戦略で必要不可欠でしょう。

ビル・ゲイツ曰く「私たちはいつも、今後数年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけないんだ。」

日本政府は2020年までにキャッシュレス比率を、2倍の40%とする方針を立てています。こと日本においてもキャッシュレス化における膨大なデータ処理に合わせたデジタルマーケティング戦略を打ち立てていくべきでしょう。

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