近年、デジタルマーケティングに力を入れる企業が急増しており、ある調査によると既に95%以上の企業がその重要性を感じているそうです。
参考:~95%以上の企業が「デジタルマーケティングの重要性」を感じる時代に~デジタルマーケティング実施状況についてアンケート調査
このようにビジネスとデジタルは今や切っても切り離せない関係になっていますが、一見、ITとの関わりが薄そうなスポーツ界にもデジタル化の波が押し寄せてきているって知っていましたか?
本記事では、その傾向が顕著に出ている米国メジャーリーグ(以下、メジャーリーグ)の例を挙げて、スポーツとデジタルの融合について触れていきたいと思います。
ポイントとしては3点です。
- メジャーリーグでは最新テクノロジーを駆使したデータ収集&分析が日本のプロ野球より徹底されている。
- テクノロジーの進化により、スポーツ界でもデジタルとの融合がトレンドになりつつある。
- 今後は別のスポーツもデジタル化がますます進んでいくと予想される。
定量調査と定性調査の違い
まず、はじめにマーケティングリサーチの基本として頻繁にする定量調査と定性調査ですが、実はスポーツの世界でもこれらの考え方が用いられ、メジャーリーグでは定量調査への過渡期にあります。
読者の方には釈迦に説法かとは思いますが、念の為、定量調査と定性調査の大きな違いを挙げておくと下記のようになります。
「数値化できる」情報を収集するのが定量調査。
「数値化できない」情報を収集するのが定性調査。
つまり、「集める情報が数値化できるものどうか」が定量調査か定性調査を分ける簡単な基準となります。 代表例として、定量調査はアンケート、定量調査はユーザインタビューがよく挙げられてますよね。
メジャーリーグでも定量調査と定性調査の概念が!?
実は、メジャーリーグでもこの定量調査と定性調査の概念が取り入れられています。
その昔、野球界では選手のスカウティングはマネージャーやスカウトの経験則を基準に行われていました。 例えば、以下のような例が挙げられます。
「あの選手は身長が低いからピッチャーとしては大成できない」
「この選手は足が速いから1番バッターとしての適性がある」
これらは定量調査ではなく、定性調査ですよね。
これまではデータを収集(定量調査)するとしても打率やホームラン数といった、”分かりやすい”数値のみが選手のスカウティングの評価基準とされていたんです。
しかし、時代は移り変わります。
なんと、野球界にもKPI(key performance indicator/重要業績評価指標)が現れたのです。
ちなみに野球業界ではKPIという言葉ではなく、セイバーメトリクス(SABR metrix)という言葉で表現されていますが、野球のKPIと覚えていただいて問題ありません。
ちなみに、セイバーメトリクスとは、ライターで野球史研究家・野球統計の専門家でもあるビル・ジェームズ氏によって1970年代に提唱されたもので、アメリカ野球学会の略称SABR (Society for American Baseball Research) と測定基準 (metrics) を組み合わせた造語です。
実は、セイバーメトリクスについては、2011年にブラッド・ピット主演の映画「マネー・ボール」で描かれました。
この映画では、それまでマネージャーやスカウトの経験則(定性調査)を基準でスカウティングしてた弱小球団が、新たにセイバーメトリクス(定量調査)を基準にチーム強化を試みました。
その結果、リーグ最低レベルの年俸総額ながら2001年と2002年のシーズンに100勝(全162試合)をしたり、その間に20連勝を記録するなど、セイバーメトリクスでメジャーリーグを席巻した実話がベースになっています。
テクノロジーの進化による野球とデジタルの融合
そして、近年の目覚ましいテクノロジーの進化より、このセイバーメトリクスを重視する傾向が年々高まってきています。
メジャーリーグ全30球団の球場では「トラックマン」というデンマークのTRACKMAN社が開発した弾道測定機器がデータ計測に使われています。
参照:「トラックマン」とは?最先端の計測機器で取れるデータを紹介!!
もともとトラックマンは軍事用レーダー式の弾丸追尾システムで、その技術が応用され、投球や打球の回転数、角度、飛距離などが計測できるようになりました。このシステムの導入により、より詳細な定量調査が可能になったのです。
Google Analyticsが野球界に導入されたようなイメージです。
更に進化は続きます。 トラックマンによるボールのデータ解析に加え、「映像解析システム」が加わり、なんと選手の細かい動きも数値化できるようになったのです。
要するに、テクノロジーの進化により、ボールの動きに加えて、人間のあらゆる動きのデータ収集&分析が可能になっています。
そして現在では、トラックマンと映像解析システムを統合したITシステムである「スタットキャスト」と呼ばれるデータ解析方法がメジャーリーグのトレンドとなっています。
パワーやスピードのイメージが強いメジャーリーグですが、意外にも日本よりも細かくテータ収集&分析がリアルタイムで徹底されているんです。
スポーツ×デジタルの融合はますます進んでいく
今回はメジャーリーグの例を挙げましたが、日本では柔道界でもデジタルを駆使して選手強化を図っており、既にスポーツ界全体でのデジタル革命も始まっています。
マーケティングだけでなく、スポーツの世界でも進んでいくデジタル化。2020年の東京オリンピックでも、テクノロジーによる様々なデータの収集&分析により、私たち視聴者の観戦の楽しみ方も変化しているかもしれません。